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2010.7.15

千葉工業大学決算(平成21年度)を承認


 学校法人千葉工業大学の平成21年度決算が5月28日の理事会・評議委員会で承認された。平成21年度は、キャンパス再開発による施設設備の充実、新学科・大学院新専攻・惑星探査研究センター開設による教育・研究の高度化などを反映した決算となった。

再開発と教育・研究の高度化反映

1.教育研究活動

(1)新学科及び大学院新専攻の設置
社会システム科学部金融・経営リスク科学科及び大学院工学研究科未来ロボティクス専攻を平成21年4月に開設した。

(2)学生生活の満足度向上へ向けた継続的対応

学生生活アンケート調査の実施と活用

学生意識の変化を捉えつつ学生指導や教育計画立案等の参考となるよう、充実させていく。

授業満足度調査の活用

FD活動の一環として授業満足度調査の結果をまとめ、授業の改善はもちろん、休学・退学者の減少につなげていく。

ICTを活用した学生サービス

学内及び自宅から、Webを利用した履修登録及びシラバスの内容の検索、確認ができる環境を整えている。
また、休講情報等をWeb及び携帯電話にて検索、確認できる。
平成20年度からは、学生証を使った出席システムが稼動、長期欠席の学生を把握し、授業への出席を促すよう連絡をしている。

学生証ICカード

「手のひら静脈認証ログインシステム」を採用した「学生証ICカード」を導入している。この学生証により、学生情報や成績情報などの個人情報を保護し、速やかに開示することを可能としている。

単位互換制度

千葉県私立大学・短期大学を中心に県内26大学、14短期大学において単位互換協定を結んでいる。
工学部においては、千葉大学工学部との単位互換協定を締結し授業を相互に開放している。

(3)学生支援の充実強化
学生センターでは、学習・研究・学生生活を総合的に支援し、センター内に設置されている津田沼教務課、芝園教務課、津田沼学生課、芝園学生課及び教育支援課が常に連携し学生支援にあたっている。
教育研究関係では、教育支援課においてJABEE(日本技術者教育認定機構)対応や教員のFD(ファカルティ・ディベロップメント)活動を専門的に支援している。

(4)入学前教育の充実
AO入試及び推薦入試による入学予定者に入学後必要となる数学、物理学、化学、英語の基礎学力の現状を認識させ、入学までの約3カ月間自己学習を推進させるため、通信添削式の学習課題を与えている。

(5)教養基礎教育カリキュラムの充実

TOEIC試験実施

学内において年6回、TOEICIPのテストを実施している。

(6)リメディアル教育の充実

プレ科目の配置

高校で数学・物理学・化学の科目をほとんど受講していない入学生に対して、数学・物理学・化学の各プレ科目を配置し、リメディアル教育の充実を図っている。

学習支援センターの開設

学習支援センターに専任の講師を配置し個別指導、少人数教育による学生一人ひとりのレベルにあったサポートを行い、各基礎科目における教育効果を高めている。

(7)キャリア支援・キャリア教育の促進
1年次にキャリア支援への取り組みを説明。2年次では進路を考える授業を開講。インターンシップ希望者の養成に努めた。3・4年次の就職支援プログラムでは、スキルアップ講座や各種資格試験対策となる講座を開設した。この一連の取り組みについては文部科学省の「大学教育・学生支援事業」の学生支援推進プログラムである「学生の孤立化を解消する就職支援プログラム」として採択された。

(8)インターンシップの促進
学部3年次・大学院1年次の秋に向けて、学生が自分の将来を見据えた実務体験ができるインターンシップへの支援を図った。

(9)教員と連携した就職支援活動の充実
本学の就職支援は、学科及び研究室指導教員が主体となり学生一人ひとりとの対話を積み重ねることを柱に進めた。これに加え、就職委員会、キャリアセンターが綿密に連携して学生の支援を進めた。
また、就職システムに関しても保護者が直接キャリアセンターのホームページから本学の求人情報を検索できるように構築し、就職情報収集のスピード化と学生のバックアップ強化に努めた。

(10)新入生に対する少人数制による総合的な支援

導入教育(オリエンテーションの実施)

全学部、学科の入学生を対象に「導入教育」の一環として各学科単位にオリエンテーションを実施している。大学での授業の受け方や、卒業までの履修計画指導等を行っている。

メンターの制度

メンターは建学の精神である「師弟同行・自学自律」の実践の一つであり、学生を少人数のグループに分け、グループごとに専任教員をメンターとして配置し、入学時から卒業まで、その成長に見合った適切な助言・指導を行っている。

(11)習熟度別教育の充実
入学時に実施するプレスメントテストの結果を参考に、教養科目4科目、基礎科目8科目、その他一部の専門科目において習熟度別クラスを開設し、学生個々のレベルにあわせた授業運営を行っている。

(12)「CITものづくり」を通じ、学生の工学に対するモチベーションを高めるためのものづくり活動支援
平成21年度より、「CITものづくり」活動支援がスタートし、「学生提案型」18件、「公募型」5件が採択された。

(13)JABEE(日本技術者教育認定機構)認定申請に向けた取組強化
平成21年度は、本学として初めて電気電子情報工学科(総合システム工学コース)がJABEE認定申請を行い、実地審査を受けた。

(14)FD活動の継続
平成21年度に実施した主なFD活動

  • 教育について全学的な情報共有と意見交換を行い、各教員の授業に対する意識や教育手法・技術の向上をはかり、より良い教育の実現につなげることを目的として「学部教育シンポジウム」[第1部(ポスター講演)・第2部(口頭発表)]を開催した。
  • 学部及び大学院生に対して授業満足度調査を行い、その結果を各担当教員に知らせた。
  • 授業満足度調査の結果を踏まえて、各教員が授業改善点検書を作成し授業改善に役立てた。

(15)海外協定大学との連携強化
短期交換留学、留学生との意見交換会、研究員の受け入れを実施した。

(16)留学生への支援の充実
留学生に対して、授業料の減免や学生生活、在留手続、就職等に関するガイダンスを実施した。

2.研究推進活動

(1)競争的研究資金等公的研究費獲得支援

科学研究費補助金

平成21年度の科学研究費補助金の申請件数は85件、継続分を含めて44件が採択された。昨年度と比較すると8件増え、研究費総額では6000万円増額の1億3500万円となった。

公的機関からの受託研究費

公的機関からの受託研究費22件の総額は2億1220万円となった。

(2)千葉大学と包括協定を締結
本学と千葉大学との間で「教育・研究・社会貢献活動に関する包括協定」を締結した。

(3)研究シーズの積極的広報展開
イノベーション・ジャパン、SURTECH2009など全国的なイベントに参加し本学研究者のシーズを発表した。
総合研究所は学内で遂行された76件の先端研究の成果を研究活動報告会として公開した。

(4)教員データベースを基にReaD等、外部ポータルサイトへの開発参加
旧教員データースから教育・研究実績データベースへの移行が完了し、研究開発支援総合ディレクトリ(ReaD)への参加が可能となった。

(5)外国雑誌購読の見直し及び電子ジャーナル、商用データベースの拡充
外国雑誌購読の見直しを行い、新たに外国雑誌の電子ジャーナル版IEEE/IELとSpringer Online Journal Archiveを導入した。
また、商用データベース及び電子ブックの拡充を図り、図書館のホームページ上から利用できるように更新し、利用者サービスの改善を図った。

(6)未来ロボット技術研究センターの活動
「ロボカップ2009世界大会」レスキュー通常リーグで準優勝、モビリティ部門及びマニピュレーション部門で優勝、自律部門で準優勝した。

  • 平成21年度中に受けた受託研究は4件で約1億2,000万円となった。

(7)惑星探査研究センターの活動
平成21年4月に「惑星探査研究センター」が設立された。
センターは、惑星探査機の開発・製作、惑星探査データの解析、惑星科学研究を主な研究内容としている。
平成21年度中に受けた科学研究費補助金は2件で3300万円となった。

3.学生支援関係

(1)健康生活への支援
4名のカウンセラー(臨床心理士)を配置し、平成21年度は、津田沼・芝園校舎とも週4回にして、カウンセリングの充実を図った。

(2)課外活動支援の充実
社会性や人間力を培っていけるよう、課外活動を通じて支援を行っている。
また、毎年活動を支援するクラブを選出し、運動用具や備品を援助している。

(3)奨学金支援活動
平成21年度から新たに、人物・学業ともに優良な学生の中で経済的に困窮度が高い学部4年生を対象とした、千葉工業大学同窓会奨学金給付制度が開始された。
これに加え、大学院授業料を貸与する本学独自の奨学金制度では、116名の大学院生に貸与を行ったほか、技術・情報振興会奨学金制度では、母子・父子家庭の学部4年生6名に対し給付した。

(4)学生寮の支援活動強化
健康管理の為、全寮生に体温計所持を要請し、体調管理の徹底を図った。

(5)新型インフルエンザへの対応
平成21年度に流行した「新型インフルエンザ」の罹患者が本学でも認められたことから、文部科学省の指針等に基づき、6月14日から19日までの6日間を臨時休講とし、学内での感染拡大の防止に努めた。

4.施設設備整備関係

(1)津田沼校地再開発計画の推進

新学生ホール棟完成

機械科実験棟の跡地に平成22年3月、新学生ホール棟が完成した。新学生ホール棟は、地上2階建ての鉄骨造で、1階は食堂、2階が購買となっている。

津田沼駅南口連絡歩道橋新設工事完成

平成21年7月には、JR津田沼駅南口広場ペデストリアンデッキから本学正門付近までを繋ぐ連絡歩道橋が完成し、完成後速やかに習志野市へ寄贈引渡しを行った。

新2号棟新築工事着工

2・3号館及び西側校舎跡地を建設地として、平成21年4月より新2号棟(20階建て)の新築工事を着工した。平成22年度内の完成を目指す。

(2)その他施設設備整備関係
再開発計画以外の大型工事としては、空調システムの老朽化に伴い、芝園キャンパス1号館系統の空調改修工事を実施。その他、図書館機能の充実を図る為、芝園キャンパス6号館(図書館)に電波式IDゲートシステムの導入工事や、電動可動式書庫の改修工事を実施した。

5.地域・社会への貢献

(1)公開講座の推進
生活・文化の向上に役立つことを目的に公開講座を開設している。
平成21年度の応募者数は前年度より増加。また、小・中・高校生や保護者も気軽に参加できる夏期講座も開講した。

(2)大学発ベンチャー
「移動ロボット研究所」に続き、平成21年9月に「フューロワークス株式会社」(代表:古田貴之未来ロボット技術研究センター所長)が設立された。同社は、ロボットやロボット部品の研究・企画・製造・販売、コンサルタント業務等を行う。

6.法人管理・運営関係

(1)監査機能の強化
機関管理体制の整備の検証と、公的研究費の実施状況について通常監査、特別監査を行った。
会計監査関係では、監事、公認会計士との連携のもと、特に資産運用、キャンパス再開発計画に対する長期資金計画等について点検、監査を行った。

(2)継続した学生支援業務、教育研究サポート業務の充実のための事務対応
教員の研究活動へのサポート強化や産官学融合の今まで以上の広がりへの対応を目指し、平成22年4月より研究支援部産官学融合課に改組することにした。

(3)教職員の協働関係体制強化に向けた事務職員のスキルアップ(SD活動)
管理職及び中堅職員を対象として平成19年度より実施してきた組織活性化コミュニケーション研修を継続して実施した。

7.財務の概要

(1)帰属収入170億6000万円 (予算比2億3600万円増 前年度比5900万円減)
帰属収入は、学生生徒等納付金、手数料、寄付金、補助金、資産運用収入、事業収入、雑収入のいずれの項目も予算比増となり、予算比2億3600万円増加し170億6000万円となった。
前年度決算比では、5900万円の減少となっている。主な要因は、学生生徒等納付金6300万円、寄付金4300万円、事業収入4800万円、雑収入5200万円増加しているものの、資産運用収入が2億900万円、補助金が5300万円減少したことによる。

(2)消費支出145億700万円(予算比6億2200万円減 前年度比6億2900万円増)
消費支出は、予算比6億2200万円減少し、145億700万円となった。

人件費は、予算比5000万円減の65億2600万円となっている。人件費比率は、38.3%で昨年度37.3%から1%上昇したものの、理工系他複数学部の私立大学の平均値(50.7%)に比し引き続き低い水準となっている。

教育研究経費は、受託研究費と通信運搬費、奨学厚生費に増加がある(通信運搬費、奨学厚生費は科目振替による)ものの、消耗品費、光熱水費、旅費交通費、修繕費、委託費等がそれぞれ減少したことにより予算比1億4200万円減少した。
教育研究経費比率は、昨年度比3.6%低い31.5%となり理工系他複数学部の私立大学の平均値(33.3%)に比し1.8ポイント低い値となっている。今後も同比率は漸増傾向と予測している。

管理経費は、予算比4800万円の減少となった。管理経費比率は、7.7%で理工系他複数学部の私立大学の平均値(8.9%)より低く、今後とも効率化を図っていく。

なお、前年度決算比では6億2900万円の増加となっている。これは資産処分差額として12億円の有価証券評価差額を計上したことが大きな要因。将来の価格変動リスクを軽減するため、保有する債券のうち、格付けがAAA未満の債券を対象として、年度末時価評価が簿価の50%未満となっているものを計上した。これ以外は、人件費1億3800万円増加、教育研究経費6億4200万円減少、管理経費8300万円増加(うち習志野市へ津田沼駅連絡歩道橋3億5000万円の寄付含む)となっている。

(3)帰属収支差額25億5400万円
帰属収支差額比率は、15.0%となっている。

(4)基本金組入額38億2100万円
概要は次のとおり。

第1号基本金:51億6300万円
建物 9億4400万円
津田沼新学生ホール棟新築 (12億5300万円)
建物支出(第2号基本金から振替) 7億7800万円
改修工事(第2号基本金から振替) 1億6600万円
構築物 △2億2000万円
津田沼駅連絡歩道橋 1億500万円
津田沼駅連絡歩道橋寄付 △3億5000万円
構築物整備 2400万円
その他の機器備品 1億100万円
建設仮勘定43億3800万円・新2号棟(第2号基本金から振替)
第2号基本金:△13億8700万円
  教育環境整備資金(津田沼III期計画) 40億円
第1号基本金への振替 △53億8700万円
内訳 津田沼学生ホール棟 △7億7800万円
津田沼駅連絡歩道橋 △1億500万円
津田沼新2号棟 △43億3800万円
建物・芝園他改修工事 △1億6600万円
第4号基本金:4600万円

(5)消費収支差額:12億3100万円
以上の結果、当年度の消費収支差額は、12億6800万円の支出超過となった。前年度の繰越消費収入超過額24億9800万円と合わせ、翌年度への繰越は12億3100万円の収入超過となった。

〔注1〕理工系他複数学部の私立大学の平均値は、いずれも平成20年度全国大学部門の値から算出(出典「今日の私学財政」日本私立学校振興・共済事業団)

〔注2〕比率の計算式
人件費比率:人件費÷帰属収入
教育研究経費比率:教育研究経費÷帰属収入
管理経費比率:管理経費÷帰属収入
帰属収支差額比率:(帰属収入−消費支出)÷帰属収入

(6)今後の課題
今後も引き続き財務基盤の安定をはかるため、次のような課題に取り組んでいく。

<収入面>

学生生徒等納付金の安定的確保

入学者数の確保はもちろん、学生生徒納付金の減少を図るためにも、教育力の一層の充実や学生への修学支援強化による退学者数の圧縮が必要である。

外部資金の獲得

国庫補助金(特別補助)、受託事業収入、科学研究費補助金などの外部資金の収入増加を図っていく。

資産運用の一層の効率化とリスク管理の徹底

その他の収入源確保策の検討

<支出面>

人件費、管理経費の効率化

22年度以降、収支状況は厳しくなると予測している。収入に見合った経費率を念頭において財務運営を行っていく。

教育研究経費の見直し

従来の延長線上ではなく、学部・学科の特色を活かしながらより効果的に展開していく。

消費収支計算書 資金収支計算書
貸借対照表