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2009.11.15

ブータンの古民家調査
本学調査チーム、総勢20人 築後200〜300年の歴史


学術誌へ成果発表
世界遺産への登録活動も
ブータン調査に参加したメンバー 地元住民とも交流 測量結果は深夜に整理
ブータン調査に参加したメンバー 地元住民とも交流 測量結果は深夜に整理
 南アジアの小国・ブータン王国で、廃れつつある伝統的古民家を調査、保存しようと本学調査チーム(代表・古市徹雄建築都市環境学科教授)が9月20日までの約1週間、現地で古民家の実測調査と集落の地形測量を実施した。古民家は築後200〜300年の歴史を持つもので、これまで本格的調査が実施されたことはなく、また斜面の地形測量も初めてという。調査チームは現在、報告書をとりまとめており、その成果を国内外の学会誌に発表することにしている。
 調査チームは、古市教授を中心に建築都市環境学科の小泉俊雄教授、遠藤政樹准教授、川崎英明講師や大学院生ら総勢20人。いずれも自費参加で、国際協力機構(JICA)が協力した。
 今回の調査は古市教授が昨年、JICAの依頼でブータンで講演したのがきっかけ。その時、古民家に案内され、同国政府アドバイザーにも就任した。今回の調査も国賓として招請されたもの。
 ブータンは1970年まで鎖国状態で、国内に近代建築はほとんどなく、すべての建築がブータン様式という。古民家は基本的に木造と土壁で造られ、クギを使わない木組み様式。しかし、現地では古びた民家は「価値がない」とみなされ、保存活動は全く行われていない。
 これを見かねた古市教授は、古民家が消滅する前に詳細な寸法などを図面に残そうと調査チームを結成。200キログラム近い最先端の測量機器などを持参し首都ティンプー近郊などで計26戸の古民家の実測調査を行った。早朝から日暮れまでハードな作業となったが、地元住民とも打ち解け、和やかな雰囲気で行われた。
 調査に参加した中村篤史さん(大学院修士2年)は「研究室の枠を超えた貴重な経験となった。短期間での重要任務に、研究室の仲間とのコミュニケーションも深まり、かけがえのない時間を過ごすことができた。先生方に国賓の名に恥じない立ち居振る舞いを徹底的に指導されたことも、マナーの大切さを改めて考えるきっかけに。ブータンというおおらかで、豊かな素晴らしい世界で過ごした日々を誇りに思います」と話していた。
 また、古市教授は「古民家の本格的調査は初めてのことで、貴重な国際的学術的成果になると思います。調査後、現地で多くの専門家を前に報告会を行いましたが、ブータン政府からは高い評価・感謝をいただき、来年以降も続けてほしいといわれました。今後は世界遺産登録へ向けての活動もしていきたいと思います」と話し、また「ブータン政府としては、今後の出版等も考慮し、本学との提携契約を結びたいとの要望があった」ことも付け加えた。
ブータンの古民家 測量する本学学生
ブータンの古民家 測量する本学学生
ブータン王国
 中国、インドと国境を接し、九州とほぼ同じ面積に約66万人が住む。首都ティンプー。民族はチベット系80%、ネパール系20%で、公用語はゾンカ語。立憲君主制で、現国王のワンチュク国王は5代目。2006年12月に王位を継承した。日本とは1986年、外交関係を樹立。現在、日本はインドに次ぐ主要援助国になっている。

船橋・湊町市場活性化に協力


本学院生青木さん
「デザイン」キーワードに
ワークショップ「ゆめのいちば」。中央奥が青木さん
ワークショップ「ゆめのいちば」。中央奥が青木さん
 空き店舗が目立つ船橋市湊町市場。こうした地域にかつての賑わいを取り戻そうと、本学学生や地元店主、地域住民らが協力し、写真展や小学生を対象にしたワークショップを開くなど地域の活性化に取り組み始めた。この試みは地域住民にも浸透、今後、こうした催しを定着させていく考えだ。
 湊町市場活性化に協力したのは本学大学院デザイン科学専攻修士1年の青木孝太朗さん。自身の研究テーマである「デザイン」をキーワードに「人と人の出会う場づくり」を考えた。
 湊町市場は約40年前、地元のノリ漁師だった大野修一郎さんのノリ干し場だった場所に近隣の農家が野菜や花を持ち寄り販売したことが始まり。その後、市場として発展し、多い時には約50店舗が軒を連ねていた。しかし、高齢化や移転などに伴い、次第に店舗数が激減、空き店舗が目立ち始めた。
 そんな中、湊町市場に元気を取り戻そうと昨年12月、大野さんの長女の田島芳江さんが娘の初さんと一緒に市場の一角にパン店「市場のパン屋さん」をオープンさせた。
 そうした折、青木さんの協力で9月のシルバーウイーク期間中、イベント第1弾として、「写真展『物産展』」を開催した。往時の湊町市場の風景や手工芸品などを展示、訪れた年配女性は「昔は頻繁に訪れただけに、とても懐かしい」と写真を眺めていた。
 9月26日には、第2弾のデザインワークショップ「ゆめのいちば」を開催。小学校高学年を対象に「ゆめのいちば」をテーマに厚紙を使った工作。本学学生がサポートし、小学生らは、自分たちの思い描く理想の市場をノリとハサミを使ってデザイン。10月3、4日に湊町市場内で作品展示を行った。
 第3弾は未定だが、青木さんは「年末年始、湊町市場で売り出しをやるので、イベントや飾り付けなどを相談しているところです」と話していた。