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2009.1.15

教育力 強化し効率化図る


ユニバーサル化へ対応
 明けましておめでとうございます。平成21年(2009年)は丑年です。世界に目を向けると、アメリカのサブプライム問題が引き金となった金融不安がアッという間に広がり、米自動車業界の不況が深刻化しました。さらにイラク戦争、最近ではタイの国内情勢が悪化、インドではテロで大きな犠牲が出ました。そうした中で本学も科学の進歩に遅れないように、工業大学としてリーダーシップを持って世の中に臨み、21世紀に生き残る、強い大学を目指し改革に取り組まねばなりません。新年に当たり、きょうは豊田耕作理事長、本岡誠一学長に魅力ある大学づくりをテーマに大いに語っていただきます。(原勇記常務理事)
 豊田耕作理事長 昨年8月、津田沼キャンパスに新1号棟が完成して、教育環境整備事業の一つがまず出来上がりました。大学としての風格を保ち、地域のシンボルともなるタワービルです。自然換気や屋上緑化にも配慮しています。今年は新2号棟に取り組み、さらに環境を一新したい。新しいシンボルタワーが相次いで出来ることで、学生の雰囲気も明るく、より学習意欲も高まっていると聞いています。
 原常務理事 新2号棟の威容完成が待たれます。
 本岡誠一学長 教育、研究設備が目に見えてよくなるので、大変喜んでいます。
 一方で、少子化時代になって「大学全入時代」と言われ、大学の機能化が始まっています。この機能化の中で大学の「出口における質の保証」が問われています。本学が選ばれた大学として生き残るためには教育力の強化が必要になっています。
 原常務理事 大学の数は700を超えているのに、受験生がどんどん減っている。
 本岡学長 そういう時だからこそ、優秀な学生を育てる教育力が求められます。従って、研究のための研究ではなく、教育を支える研究が大切になります。高等教育の場としてのあり方、教育研究のあり方が本学を発展させるポイントです。全学をあげた教育の支援体制の強化、効率化が急がれるわけです。すなわちアドミッションポリシー(求める学生像)、カリキュラムポリシー(教育の実施に関する基本的な方針)、ディプロマポリシー(出口での質の保証、人材養成目標)を含めた大学の中長期的な計画を策定していかなければなりません。
 豊田理事長 ひと言でいえば「誰でも大学へ」という現代のユニバーサル化時代には、学生数の量的確保と質的維持双方のバランス、調整が大きな論議になっています。ですから、ハード、ソフト、それに(学内の)雰囲気という三位一体がうまく融合していくのがいい。これが学生の資質を引き出すための、学長の話される、いわゆる“教育力”です。
 本岡学長 現状認識が大切です。少子化だけでなく、理工系離れもあります。2008年度入試で4年制私立大学の47・1%が定員割れを起こしております。粗っぽい言い方をすれば、実に2校に1校が定員に満たないのです。こうした時こそ大学の存在価値をアピールし、環境整備、教育力の増強をしなくてはなりません。教員には教育を支える研究をしてもらい、学生参加型の教育を目指すべきだと考えております。

21世紀に躍進確信 企業と連携図る


育て 行動型人間
教員と学生との対話を重視――
 豊田理事長 学生がいてこその大学なんだから事務サイドでもどうやったらサポート出来るか、折に触れ話しています。必要なのは組織全体の融合ですね。核にあるのは学生ですから。一番大事なのは学生を集めることです。
 原常務理事 学生が興味を持ち、夢を抱ける研究というプロジェクトが、5年に1度ぐらい欲しいですね。
 豊田理事長 大学を取り巻く環境も変わってきているので、従来の考え方にこだわらず柔軟に対処すべきだと思います。環境問題なども学生参加型で出来るのではないか。
 本岡学長 学生が自ら学ぶという学習面で話しますと、一番重要なのは教職員の連携ですね。学生の支援体制の構築、これをやりっ放しでなく、絶えず検証していく。学生支援センターの充実、高校をリタイアした先生の採用などを理事長にお願いしたいですね。それから教員の評価では、研究面だけでなく、どのような教育を学生にしているか、「教育効果」という観点からも見ていかなければいけないと思います。来年度からは、教育を支援する研究のあり方も教授会でも議論したい。09年度中になんとか教育評価も含め教育支援体制を確立したい。
 豊田理事長 本学も学科編成体制を再検討する時期にきているのかもしれません。
 本岡学長 そういう意味では今年4月、社会システム科学部に「金融・経営リスク科学科」を開設するのはタイムリーだったと思います。今後、企業と連携を図り、実践教育に力を入れていきたい。
 原常務理事 学長、幅の広い人間を育てるにはどういったお考えがありますか。
 本岡学長 私が考えているのは対話型です。話をしながら、分かるか、どこが分からないか――と先生と学生の対話を重んじるわけです。昨今は受動的な学生、指示待ち人間が増えて、先生に積極的に質問したりせず、会話にも入ってこない学生が多くなっています。世の中は、有機的なつながりの中でやっていくのであって、一人の優秀な人材だけでは物事は出来ない。指示待ちでなく、自ら考えて行動できる人間を育てなければならない。コミュニケーション能力を養うためにも学生が先生と話し合う機会を多くつくることです。
 原常務理事 施設面では5カ年計画の最終となる新2号棟の完成で、いわば住環境は良くなってきます。あとは教育の中身です。これでこそ本学は21世紀に躍進出来ますね。理事長、締めくくりをお願いします。
 豊田理事長 本学は、ぜひ21世紀にも悠々と生き延びていく大学になってもらいたい。私たちの母校でもあるわけですから。
津田沼キャンパス新1号棟20階ホールより望む富士山遠景
津田沼キャンパス新1号棟20階ホールより望む富士山遠景