NEWS CIT ニュースシーアイティ

2007.10.15

本学で日本ロボット学会学術講演会


ロボット研究と実用化をテーマに734件発表
多くの研究者の参加で熱気に溢れる発表会場
多くの研究者の参加で熱気に溢れる発表会場
 9月13日から15日まで本学津田沼キャンパスで第25回日本ロボット学会学術講演会が開かれた。メーンテーマは「ロボット研究と実用化」で、現在、重要課題の一つとなっている知能ロボットとその周辺技術の実用化に焦点を当てたもの。全国から研究者1300人以上が参加、発表された研究テーマは734件に上り、いずれも過去最多を記録した。この間、一般公開セッションや機器・カタログ展示も行われ、本学は秋の3日間、ロボット一色に染まった。
中野教授 佐藤会長
中野教授 佐藤会長
 日本ロボット学会は1983年に創立され、現在会員4200人。学会誌・欧文誌発行、シンポジウムやセミナーの開催などを行い、研究発表と技術交流の場を提供しているが、年に一度の学術講演会は最も大きな行事。
 毎年各地の大学で開催されているが、本学では初めて。未来ロボット技術研究センター(fuRo)や工学部未来ロボティクス学科開設などで進展著しい本学の研究・開発が評価されたとみられる。今回の学術講演会は、本学未来ロボティクス学科長の中野栄二教授が実行委員長、同学科の大久保宏樹教授がプログラム委員長を務めた。
 初日の13日は午前9時台からいくつもの教室でセッションが始まり、細かく仕切られた時間割に従って午後6時近くまで、切れ目なく発表が行われた。このうち、中野教授の「ロボット創造教育」や富山健教授(未来ロボティクス学科)の「感性ロボティクス」などは、今回のメーンテーマと直接結びついた「オーガナイズドセッション」として行われた。
 今回は一般公開セッションが3つ開かれた。13日は「2050年のロボット社会に向けて〜経済産業省・日本人間工学会・人口知能学会ジョイントパネル〜」と題し、3学会が策定したロボット技術アカデミックロードマップ(ARM)を中心に2050年のロボット社会の展望や、そこに至るための技術・課題について発表・討論が行われた。
 会の冒頭、日本ロボット学会の佐藤知正会長があいさつ、ロボットの役割として、『人を知る・人の役に立つ・人を感動させる』の3つを挙げ、ロボットを通じて大きなプロジェクトを生み出し、日本全体を元気付けよう――と語った。
 同じく一般公開のロボティクス若手ネットワーク・オープンセミナー『君と共に、ロボティクスが拓く未来』(15日開催)では、古田貴之fuRo所長がトップに登場、「未来のロボット技術」と題して中高生を含めた聴衆に夢を語った。脚・車輪ハイブリッド多関節移動ロボット「HallucII」を環境に優しい、人間の役に立つロボットとしてデモを交えて紹介。人間の文化に目を向けたロボット実用化が大切と訴えた。
 14日には25周年記念行事「メディアから見たロボット業界への期待、提言・パネルディスカッション」も公開された。
本学の発表者 =敬称略=
【オーガナイズドセッション】
▼ロボット創造教育=中野栄二▼特殊移動=中野栄二、米田完▼感性ロボティクス=富山健▼ロボティクスにおける感性工学の役割=富山健▼生物の運動とロボティクス=菊池耕生▼ロボット研究と実用化=南方英明、中野栄二
【一般セッション】
▼経路生成と行動計画=王志東▼非ホロノミック系=大和秀彰▼移動機構=中嶋秀朗▼形態と知能のバランスを考慮したロボットの設計原理に関する研究=安田君任、川上拓磨、岩野弘明、菊池耕生▼自励運動に同期する2足歩行の研究=米田完▼迎角と前進翼角の違いによる蝶型はばたきロボットの飛翔特性解析=藤川太郎、平川和明、佐藤芳憲、眞方勇介、菊池耕生▼介護者支援ロボットにおける感性関連研究の取り組み=富山健▼車輪型ロボットを用いた車いすの段差乗り上げ手法=中野栄二

ロボット開発を推進


井川・トヨタ自動車専務が講演
ロボット開発の特別講義をする井川氏
ロボット開発の特別講演をする井川氏
 また、同日4時から、幕張メッセ近くのホテル「東京ベイ幕張」で表彰式と特別講演会、そして懇親会が行われた。同学会が毎年行っている論文賞、実用化技術賞、研究奨励賞、フェローの表彰終了後、約1000人の聴衆を前に、トヨタ自動車の井川正治専務による特別講演「ロボット開発の現状と未来」が行われた。
 井川氏は高齢化社会や環境問題に対応するためロボット技術が大いに期待されると前置きし、まずトヨタ工場でのロボット化の進展、作業者との共存の状況をビデオなどを使って説明した。
 その上で、「工場から社会へ」という思想のもと、人のパートナーとしてのロボット開発に進む考えを披露。家事支援、介護支援、医療支援、物づくり支援、パーソナル移動支援を目指して21世紀の夢を実現したいと述べ、これらの開発には産官学の連携が不可欠だと結んだ。
原常務理事 1000人の出席者でにぎわった懇親会会場
原常務理事 1000人の出席者でにぎわった懇親会会場
 懇親会では本学の原勇記常務理事が乾杯の挨拶で、「ロボット先端国として産業化を図れば日本の将来は明るい。人類の福祉を夢として活動している皆さんに敬意を表する」と参加者の健闘を称えた。

本学に初のベンチャー企業 − 社長に小柳fuRo副所長


レスキューロボなどの実績生かす
レスキューロボットの研究を続ける小柳副所長
レスキューロボットの研究を続ける小柳副所長
 千葉工業大学は初の大学発ベンチャー企業「株式会社移動ロボット研究所」を9月に設立した。すでに社会的な実績を持つレスキューロボット「ハイビスカス」や床下点検ロボット「アイリス」などの機能ロボットの企画・研究・販売を目的としている。
 本社は津田沼校舎8号館5階に置き、代表取締役社長に本学未来ロボット技術研究センター(fuRo)の小柳栄次副所長が就任。創業メンバーはほかに、吉田智章fuRo研究員と小柳氏の恩師である油田信一筑波大学教授の2人。資本金は600万円で千葉工大と富士ソフト(株)も出資した。
 ハイビスカスは地震などの被害を受けた危険地域で人命救助や被災地復旧に威力を発揮。中越地震でも人間に代わって調査に活躍した。
 アイリスは大和ハウス工業(株)と共同で開発を進めており、住宅床下の人間が入り込めないような空間で、水漏れ、腐食など劣化状況を精密に点検する。
 今後も研究育成に役立つと判断すればベンチャー企業を設立していく。