2007.1.15
1面

新校舎建設で さらに充実

“学生が自ら学ぶ大学”へ

 明けましておめでとうございます。今年も大学を取り巻く環境は厳しいものがあります。その中にあって、本学は昨年「未来ロボティクス学科」を増設しました。また、学生の教育環境の整備をはかり、「御宿研修センター」の完成を見ました。さらに、学生の教育研究、学生生活の向上を押し進めるため、「魅力ある大学づくり」を目指して、昨年秋、津田沼キャンパスのシンボルタワーとなる“新1号棟”と芝園キャンパスの“新校舎”の地鎮祭を行い、第1期工事に着手しました。本年は、さらに充実する教育環境を土台にして大きく飛躍の年にしたいと思います。そこで、豊田耕作理事長と本岡誠一学長に新年の抱負などを伺いたいと思います。

(司会・原勇記常務理事のあいさつから)

2007新春対談 大学全入時代に向け長期的展望

大学全入時代を迎えて“飛躍の年”を誓い合う豊田耕作理事長(右)と本岡誠一学長
大学全入時代を迎えて“飛躍の年”を誓い合う
豊田耕作理事長(右)と本岡誠一学長

 原常務理事 早速、本題に入りたいと思います。一番大きな問題として、平成19年の“大学全入時代”を迎え、将来に向けての長期的な企画、展望が必要だと考えますが…。
 豊田理事長 現在、私立大学は全国で568校、国公立大学を含めると744校あり、すでに定員の一割を割っている大学が222校もあるそうです。さらに50%に満たない所も20校あり、驚くべき数字です。このような環境を考えて、魅力ある大学づくりの一環として、本学はキャンパス5カ年計画に基づき、すでに津田沼、芝園両キャンパスで新校舎の工事に着手しました。これらの教育環境にきちんと対処できる教育体制の構築に努力したいと思います。
 常務理事 法人としては、校舎もきちんと整備することは大切ですね。学生が勉学意欲を燃やすような、それに合わせて教育力の問題があるのではないかと思うのですが…。学長いかがですか。
 本岡学長 千葉工業大学は、少なくとも「どういう大学なのか」を知ってもらうために、まず本学の『教育力』というものを表に出したい。例えば、社会で役立つ基礎学力をしっかり身に付けた学生を多く輩出できる大学にしたい。また、工業大学なのだから、少なくとも入学した諸君が、モノづくりをやろうといった時に、いくらでもサポートできる大学という特色を出せないといけない。究極的には教える大学ではなく、学生が学ぶ大学に持っていかなければと思います。
 常務理事 具体的には……。
 学 長 どうしたらよいかと言いますと、本学が掲げる『建学の精神』のうち“師弟同行”を実践しなければと考えます。いまは、学問的にも多様化した学生が入学してくるので基幹科目[注1]だけでも習熟度別に分けて懇切丁寧に教育をし、卒業時での質の確保をはかりながら、もう一つの建学の精神である“自学自律”のできた学生を社会に多く送り出す必要があります。

豊田理事長 本岡学長
豊田理事長 本岡学長

建学の精神“師弟同行”の実践を
基幹科目の教育指導が大切

 理事長 確かに自学自律の意欲は大切です。とにかく勉強をしようという意欲を持ってもらおうということは大切ですね。
学長が言われることを別の言い方にしますと、工業系大学なのだから、入学時に何かモノづくりの興味を抱かせ、モチベーションを持つということですね。
 常務理事 教学の立場からはいかがですか。
 学 長 そうですね。入学時から、学生に対してモノづくりの動機づけをしていかなければならないと思います。具体的にはモノづくりをしながらその論理体系を学ばせる教育が大切だと思います。そのためにはしっかりとした基礎学力、基礎知識を身につけさせることが重要です。このほかには、JABEE=ジャビー[注2]も第三者評価も大切ですが、まずは学生をドロップアウトさせない、しっかりした教育をやろうというのが私の考えです。
 理事長 そうですね。学生たちの勉学意欲を養うことが最も必要です。
 学 長 いまコンピュータを使う学生は大勢いますが、仲間の学生とコミュニケーションが取れないとか、仲間に入っていけない学生が多いのです。先生方のきめ細かな指導によって、退学する学生が一人でも二人でも減ればよいと思います。
 理事長 退学者については、どこの大学でも問題になっていますね。とかく学生は「オレはこれをやりたい」という認識が薄いような気がします。
 学 長 学生が目的意識を持たないまま、専門課程に入ってしまうからだと思います。1年生の時から「何を学ぶか」「何を目指すのか」ということを学生に考えさせなければなりません。そのためにまず、専門の先生方全員に入学時から1年間、少人数の学生を担当していただき、大学に対する期待感をふくらませ、孤立感を持たせないよう指導していただければと考えています。私はいま、このガイドラインを作る作業をしているところです。
 常務理事 本学は創立65年の歴史があります。ここでもう一つ飛躍したいですね。
 理事長 当面は18歳人口が増える見込みはないのですが、定員割れだけは避けたい。この“冬の時代”をいかに乗り越えていくかは、教職員一人ひとりが一体となって考えていかなければならない問題でもあります。
 学 長 その通りですね。だから教職員一人ひとりが意識改革をして、前向きにものを考えていかないといけません。
 常務理事 進歩的な大学になるために、意識改革が一番大事な“キー”になるかも知れませんね。
 理事長 平成20年には、いよいよ第三者評価を受けなければならないので、平成19年がきめ細かい準備の大切な年になると思います。FD[注3]の問題も時代の流れです。
 常務理事 このあたりについて学長いかがですか。
 学 長 FDに対しては新しく委員会を立ち上げてやっています。それよりも個別評価であるジャビーは平成18年から電気電子情報工学科で取り組んでいます。来年度からは情報工学科と情報ネットワーク学科、あるいは経営情報科学科とプロジェクトマネジメント学科、工学部では生命環境科学科でジャビーに取り組みます。少なくともジャビーに対し積極的に取り組むことで、FDを含めた全体評価である第三者評価に対する取り組みがかなり進展すると思います。
 常務理事 これからは組織の中で横の連絡がオーガナイズ化され、教員と職員との一体化という議論が交わされる必要が求められると思います。
 学 長 ジャビーに対応できる事務組織の編成を提案したい。これを通して第三者評価に向けても進んでいけると思います。
 理事長 やはりジャビーの取り組みは大切な問題ですね。
 常務理事 ジャビーの話が出ましたが、最近、大学の社会貢献ということが言われております。本学の社会貢献といいますと……。
 学 長 本学は「産官学融合センター」を立ち上げ、卒業生による「技術士会」を発足させました。この点では本学は進んでいて「技術士会」結成は全国で7大学しかありません。本学は工業大学ですから技術シーズを地域社会に還元するよう本学の技術士会にコーディネート役をしてもらい、社会貢献できるシステムの構築をすでに行っております。
 理事長 とにかく18歳人口は増えないのだから、大学の冬の時代は長い間続くと思う。だから、大学のためになる提案を幅広く、多くの人から意見を聞き、大学運営に生かしていきたい。
 学 長 魅力ある大学づくりを絶えず心掛けていかなければならないと思います。大学も勝ち組と負け組の二極化が進んでくると思います。良いものは、どんどん取り入れて、10年先、20年先を考えていかなければならない。ジャビーがその良い例で、また反省点でもあります。今後の大学の評価は、入学時の学力が不揃いである学生でも卒業時には質の確保のできた学生をいかに多く世に送り出すかにかかっていると考えます。従って、社会で役に立つしっかりとした基礎学力を持った学生の育成を本学の特色の一つにできればと思っています。
 常務理事 本日は新年にあたって前向きで建設的なお話をいただきありがとうございました。

ことばの解説
[注1] 基幹科目
工学部各学科(未来ロボティクス学科は除く)で履修コースへの導入として位置づけられる学科独自の体系的な学習を促す科目。
[注2] JABEE(Japan Accreditation Board for Engineering Education):
日本技術者教育認定機構。
[注3] FD(Faculty Development):
教員が授業内容・方法を改善し、向上させるための組織的な取り組みの総称。
新春対談に臨む(左から)本岡学長、豊田理事長、原常務理事
新春対談に臨む(左から)本岡学長、豊田理事長、原常務理事


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